ヨーク大学日本語科二学年読解・会話教材
AS/JP2000 6.0 Reading Comprehension and Dialogue

28課 試験Exams and Tests


 

「読解」 Reading Comprehension

 

交換留学生清水まゆみさんは、秋学期ははじめての外国の大学での勉強だったので、講義もあまりよく聞き取れず、教科書読むのにもだいぶ時間がかかり、小論文英語では書きにくく、試験の勉強もどうしてよいか分からず、とても困りました一番問題なのは、やはり英語力で、カナダ人の学生だったら、 一日で読める本が、三日かけても読めないのです。もっと大変なのは書くで、小論文なら友達に見てもらえるから、まだいいのですが、論文形式のテストは時間が足りなくてお手上げでした。結局経済学のコースを一つ落としました。英語を含めた他の三つのコースの成績はまあまあでしたが、心理学の小論文は先生に提出期限延期してもらって、冬休みに書いて、先日出したばかりです。今学期は、三つしかコースを取っていませんが、「読書週間」が終わるとすぐ試験があることになっているので、今から戦々恐々です。それで、今日は、日系カナダ人のアドバイザーの正木教授相談に行くことにしました。


「会話」 Dialogue

清水:  先生、今日はお忙しいところをどうもすみません。

正木:  久しぶりだね。勉強のことで悩んでいるんだって。

清水:  はい、秋学期は、コースを一つ落としましたし、成績もあまりよ
        くなかったので、どういう風に勉強したらいいか教えていただけ
        ないかと思って。

正木:  そうですか。聞き取りの方はだいぶなれたでしょう。

清水:  はい、はじめのころと比べたら、かなり分かるようにはなったの
        ですが、語彙不足痛感しています。

正木:  たいていの留学生に共通した問題ですね。これは、すぐによく
        なるというものではないんですが、それぞれの分野に出てくる
        専門用語書き出して意味使い方きちっと頭に入れる
        力
をしたらいいと思います。

清水:  読解の方も、読んでも後で何が書いてあったか覚えていないの
        ですが。

正木:  それもよくある問題で、読む時に本当に内容理解していない
        だけでなく、自分の言葉で内容を記憶していないために起きる
        問題です。

清水:  どうしたらいいでしょうか。

正木:  私は、大切なところをハイライターで記して読み終わって
        ら、そこだけ拾い読みして、内容を覚えておくことにしていま
        す。これで内容がだいぶ頭に残ると思います。これは試験のた
        めに復習をする時にも役に立ちますよ。

清水:  ぜひやってみます。最後に討論なんですが、他の人が話して
        いる時に、どこで話し出したらいいのか分からなくて困るんで
        すが。

正木:  それは、でも困る場合があるんですが、要するに、英語と日本
        語の会話ストラテジー違いからくるものだと思います。英語
        は一般的に対話的」、日本語は「独話的」と言えます。どうい
        う意味かというと、日本人同士の会話を聞いていると、たいてい
        中心人物が、一人で話していて、あとはみんな聞き手回って
        ます。英語の場合は、キャッチ・ボールのようにある人が話した
        ら、次の人がそれを受け止めて話すというように、会話が進んで
        いきます。ですから、どこで会話に割り込んで、自分の会話を進
        めるかという規則心得ているわけです。日本人が会話に弱い
        いうのもこんなところに原因があるのです。

清水:  なるほど、おっしゃる通りですね。時々何とか相手の話に割り込
        もうとするのですが、相手にされないのです。

正木:  そうですね。話し手が自分の主張しているのです。

清水:  今日は勉強になるお話を本当にありがとうございました。少し
        分
になりました。

正木:  そうですか。それはよかった。問題があったら、またいらっしゃ
        い。


© Norio Ota 2008