Japanese Section DLLL, York University ヨーク大学日本語科四学年読解教材 「生まれの順位による性格の相違」 |
自分は、いわゆるポップ・サイコロジーの本があまり好きではない。いかにもまことしやかに人の性格やそれにまつわる問題などを説明してあることが多いからである。しかしその中で例外が何冊かある。その一つに「生まれの順位による性格の相違」'Birth Order Book' という本がある。数年前に読んだのであるが、その中に自分を発見して、なあんだ、自分はこんなにも典型的なのかと気づかされたと同時に、異文化を越えて、その性格記述がかなり良く当てはまることにも驚かされた。それ以後、よく人に会うと、必ず兄弟姉妹の何番目かを予測してから、自分の観察が正しかったかを確かめることにしている。新学期になって新しい学生に会った時も、この性格に気をつけて観察してみると、ほぼ八割がたは当たるように思う。パーティーなどの会話の材料としても結構楽しい材料になる。また、これと、東洋の干支・西洋の星占い・血液型による性格の相違などと比べてみると、もっと面白いことが分かる。それは後に譲ることにして、この本の作者は臨床心理学医であるが、数多くのデータを分析した結果、歴史上、世界中で有名な科学者・政治家・哲学者などの七十パーセント以上が一人っ子を含めた第一子であるという。その理由は、彼らの共通した性格に求められる。第一子は、完全主義者・労働中毒者・権威主義者・独善主義者・批判好きで、人にものを頼まれたら、いやとは言えない性格である。その結果、いずれ身体に欠陥を生じるとのこと。 几帳面な性格の一例として、詳細な計画を立てて貼っておくというのがあったが、これなど、日本から来た、友人が、奥さんが来る前、一ヶ月分の献立を冷蔵庫の扉にはってあるのを見て、なるほどと感心させられたものである。彼はやはり長男である。 それでは、著者が「孤独な一人っ子」と呼ぶ一人っ子の性格はどうかと言うと、第一子の性格に「超」という接頭語をつけなさいであった。超完全主義者・超労働中毒者などなど。自分の性格がずばりと言い当てられているようでいやあな感じである。 中間の子供達は可哀相に十ぱ一からげである。その性格はといえば、先ず第一に、頑固、当たっている、家内は真ん中である。子供のころの渾名は、「ロバのフラン」であったと聞く。因みに、ロバは英語で頑固者の象徴である。ジキル博士とハイド氏的性格、いい時はすごくいいが、悪い時は、非常に悪いという善悪対照的な性格。これも当たっているなあ。また非常に私的で、自分のことはあまり話さないが、聞き役が得意で、調停にも才能があるとか。どちらかというと、芸術方面の才能に恵まれている。家内は音楽家である。我が家は息子が四人いるので、それぞれの性格を観察してみるとまた面白い。次男はやはり家内に似ているし、長男はどちらかというと私に似ていると言えそうである。三男は、割と晩生で現在やっと本来の性格形成中と言ったところで、まだ分からないが、大体において本の記述に合っている。 末子の性格は、どんな犠牲を払っても、人生を楽しむタイプ。平気でまことしやかな嘘がつけ、人を信じさせる能力に長けている。人心操作が上手である。経済観念はゼロ。などなどである。末子同士の結婚例があげられていたが、二人ともクレジットカードの使いすぎで、破産宣告をし、経済コンサルタントに相談にのってもらわなければならなくなった。我が家の末子の性格とぴったりである。小学生の時、家内と私の預金口座を空にして、ビデオ・ゲームセンターに入り浸っていた経験があるのである。
同書の著者は、「役割の逆転」という現象も扱っている。第一子が、その役割を果たさない場合、第二子が、取って代わるというものである。我が家の長男・次男はこれに当てはまるような気がするが、最近やっと長男がしっかりしてきたので、判断は保留しておいた方がよさそうである。他にもいろいろ面白いケースが書かれていたと思うが、著者は、結婚相手は、違うカテゴリーから選んだ方がうまくいくとアドヴァイスしている。これは常識で考えても、納得が行くと思うが、長男・長女では、ぶつかって困ることであろう。家内と私は結婚生活二十八年を越えたが、離婚・再婚が日常茶飯事になっている昨今、長続きしている夫婦の生まれの順番を調べてみたら面白いだろうと思う。家内の姉は長女で、連れ合いは真ん中である。円満とは呼べないまでも、結婚暦三十年以上である。両方とも同書の記述にぴったりの夫婦である。
以前我々がミシガンに住んでいた時、高速道路際の休憩所で、魚座に関する記述を見つけたことがある。それまでもいくつかの記述を見たことがあるが、これは、すべてぴったりで少々恐いほどであった。魚座は、御存知のように二匹の魚が反対方向に泳いでいるので、水に関係があると言われている。旅行特に海外旅行が多い、酒を飲むのが好きである。感受性が豊かで、精神的であり、常に崇高な存在を求めている、等々。少々いい事ずくめではあったが、なかなか気に入った。家内は、牡羊座で、頑固で猪突猛進型、人の和を保つのが上手、リーダーシップが取れる、良い聞き役などであった。次に十二支では、私は雄鳥、自信が有りそうに見せるが本当は心配性で、臆病であり、優柔不断・独善的とあまりいいことは書いていない。家内は犬で、忠誠心があり、理解力・同情心にすぐれ、信頼できる友といいことばかりである。 義理のおばの一人が、昔血液型と性格の関係について凝っていたことがあるが、彼女によると私は典型的なBだそうである。つい最近見た血液型に関するテレビ番組によると、B型は、好奇心が旺盛、常に新鮮さ・刺激・ハプニングを求め、天の邪鬼だそうである。これもぴったりである。家内は、Oで、人に与える性格。因みに現在牧師をやっている。
こういう風に見てくると、東洋と西洋の星占いなども、たかが迷信と笑っていられなくなるように感じる。一番面白いのは、典型的な性格が洋の東西を問わず、かなり正確に当たっていることである。我々人間の性格の幅は、確かに生理学的に限られているので、無限の性格があるわけではないし、長年にわたる性格に関する観察を統計的に処理したものが、星占いだとしたら、まんざら、馬鹿にできない。西洋の科学で、現在それを追跡調査し、確認しているような面もあるといえる。皆さんも回りを見まわして、人々の観察をしてみたらどうでしょうか。
トロントにて 太田徳夫 1999年5月17日 |
© Norio Ota |
Last Modified: 26-Sep-2015 |